事業の企画背景
精神や知的等のしょうがいしゃ(国立市の行政表記に倣い、固有名詞以外はすべてひらがなで記す)の生活は、施設から地域への移行が推進される一方、自宅と通所先との往復の生活に閉じられがちで、共生社会の実現を阻む社会的分断や社会的孤立が指摘されています。
わたしたちは、医療や福祉の制度拡充だけではなく、障害の有無にとらわれず互いに学びあい、つながる共生の地域づくり(=「キョウドウを生きる暮らし」)が必要だと考えています。
本事業は、その具体的な実践モデルは、「リカバリーカレッジ」や「リカバリーの学校」といった先行実践です。「リカバリーカレッジ」とは、英国で生まれた取り組みで、近年、日本の各地でも実践されています。この取り組みは、市民のメンタルヘルス向上に向けて、疾患のある人やその支え手が、多様な生きづらさ/生き辛さ等と向き合いながら地域で豊かに暮らしていくために、支援/被支援の関係を超えて協同し、互いに学びあうことを推進しています。
また、「リカバリーの学校」は、「リカバリーカレッジ」とは別の文脈で、東京都調布市ではじめられた「精神疾患があっても充実した人生を送る」ことをコンセプトにし、『リカバリーの学校の教科書:精神疾患があっても充実した人生を送れます!』(EDITEX、2012年)というテキストからテーマを選び、精神疾患経験者の体験談も交えながら、対話的な学びの時間をもつ取り組みです。
本事業はこれらに着想を得ながら、教育と福祉、一般市民としょうがいしゃをつなぐ、「キョウドウを生きる暮らし」を実現する国立市独自の共生の学びの場づくりを目指します。なお、ここでの「リカバリー」とは、症状やしょうがいからの「回復」の意味で用いず、多様な「生きづらさ」を抱えながらも、その人らしい人生を主体的に求める生き方としています。
また、国立市では、ソーシャル・インクルージョンの理念のもと、まちづくりの根幹に広義の健康=「ウェルビーイング」を据え、「健康まちづくり戦略」を策定し、今後施策を推進しようとしていますが、本事業は、こうした国立市の理念や施策とも親和的で、国立市の関連部署と連携・協働することで、相乗的な効果も期待できます。
本事業は、令和5年度より「リカバリーの学校@くにたち」(以下、「RGK」と表記。)として生涯学習プログラムの開発を国立市と実証してきました。特に、これまでしょうがいしゃの生涯学習分野で実績があり、文部科学省第78回優良公民館表彰において「最優秀館」に選ばれた行政機関として国立市公民館と協働します。国立市公民館がプログラム実施面で主体的に参画することで、地域や行政全体への波及効果も期待されます。
なお、「キョウドウ」とは、共同・協同・協働等によって孤立や排除に抗する地域を創る意味で用いています。本実践研究事業を通じて令和5年度から実施しているRGKでは、背景・属性が異なる人々が国立市内外の既存/新規の場を知り、足を伸ばし、そこでの出会い・交流を行う等相互的な場の移動が伴っています。RGKではそれをひとまず「回遊性」としています。
このような移動は、場・コミュニティをまたぎ、個人の属性、立場、コミュニティ、分野のちがいによって引かれた境界線を結果的に越え、なかにはそこでの関わりによって相互の内面的変化/変容が起こっていることがみうけられます。RGKでは、これらの事象を「越境性」と呼んでいます。
回遊性・越境性・共生圏

そして、このように人と人が相互に作用し合いながら、自発的な移動・活動によって、人と人とが交わる範囲が実質的に広がっていく「共生圏の拡張」(仮説的概念)を通してみることで、「障害者の生涯学習」による多様な人々の参加・参画によって、だれかとの関係がつながっていき、孤立や排除に抗する地域を創ることにつながると考えています。
共生圏の拡張

生涯学習プログラムの概要
令和8年度「リカバリーの学校@くにたち(RGK)」は、全体として学習者主体・参画の場となるよう学びの場づくりを行っていきます。具体的には、「サロン『リカバリーの学校』」、「『ダイバーシティサッカー』の場づくりを学ぼう〜仲間はずれを生まないプレイフルな時間とは?〜」、及び「学習者参画プログラム」等3つの講座プログラムを中心に実施します。



